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保険取扱いにかかわる統一基準の重要性について

元厚生労働省療養指導専門官 上田孝之

 私たち柔道整復師の保険適用は、労災や生活保護、損保など広く取り扱いが認められているが、その基本となるのが健康保険法の療養資の取り扱いであることは、皆もご存知のことと思う。柔道整復療養費は、過去から受領委任払いの協定等があったことから、料金や留意事項の事務処理の取り決めがあった。しかしながら会計検査院の是正要求や医療保険審議会の部会意見書などにより、柔整療養費の取り扱いの適正化に向けた基準作りについて"宿題"が出され、審査基準を統一的に定めることを求められたのである。レベルは低かったかもしれないが、国としては何とか統一基準を策定し、“宿題"を終えたと国会でも回答があった。

 最近、既に周知済みの統一基準について、柔整業界側が個別に地方社会保険事務局や県と交渉し、厚生労働省保険局で定めた基準に対し「ローカルルール」を持ち出すことによる当該基準の緩和策を策定している動きが目立ってきた。この動きは、保険局医療課が発出した通知について適用上緩和した療養費支給申請を許すための取り組みであることから、一面的には業界に有利なように思える。また、実際の請求額を増やすことができたり、支給申請にかかわる煩わしい事務処理を緩和・省略でき得ることになることをもって歓迎したり評価したりする先生もおられると思う。

 だが、私はそうは思わない。例として近接部位の算定方法を考えてみると、多部位の近接の申請にあたって適正かつ効果的な算定基準が作られたのであり、近接における請求制限をかけることを目指したのであるから、どことどこの負傷部位が近接であるかどうかの基準であるはずだ。にもかかわらず、通知の国語的齟齬を消極的に解釈し、負傷発生に時間的相違があれば近接に当たらないなどという取り扱いが行われていることを、私は最近知ったところである。冷・温罨法加算やその他にも地方の一部に適用されている「地元のルール」があることを知った。

 どこに施術所を開設しようと保険者がどこに所在しようと、また、審査をする柔整審査会がどの県にあろうと均一公平な支給決定がなされることが大切であり、基準の統一化が保険者や患者から信頼されることに繋がっていくと考える。一部の県においてのみ通用するとか、県内でも社保と国保の取り扱いが相違するなどということはやめたほうがよろしいのではないだろうか。

 保険の申請に当たって納得できない点があるのであれば、きちんと問題点を明らかにし、発出された当局に修正通知や事務連絡を出していただき、正々堂々とやるべきである。そうすることにより全国に修正のメリットが共有されることになる。このとき留意しなければならないのは、本当に業界にとってメリットになるかどうかである。そのための知恵出しを皆でやっていこうではないか。

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■上田孝之氏略歴 1958年8月 北海道函館市生まれ 1984年3月 日本柔道整復専門学校卒業、同年柔道整復師登録、社会保険庁運営部企画課計画班主査、社会保険庁運営部企画・年金管理課運営企画室主査、厚生省保険局医療課療養指導専門官、厚生労働省保険局医療課療養指導専門官、厚生労働省東海北陸厚生局健康福祉部社会保険課長補佐、同局上席社会保険監査指導官等を経て、2006年厚生労働省を退官。


上記文章は、日本鍼灸マッサージ新聞発行「鍼灸マッサージ新聞 平成18年9月20日号 柔整版」に掲載されておりますが、上田孝之氏ご本人よりSQSにも寄稿されたものです。


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