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社会保険庁解体後の政管健保について

元厚生労働省療養指導専門官 上田孝之

 年金記録の盗み見や不正経理と無駄遣い、さらには全国規模での国民年金保険料不正免除事件の発覚などにより、社会保険庁は平成20年9月をもって完全解体する。
そして平成20年10月、新たな組織として設立される全国健康保険協会(似下、健保協会)が政府管掌健康保険の運営を行うことになる。
社保庁時代の全国一本の制度から、新たに都道府県の支部単位での財政運営に移り、それぞれの保険料率が設定できる。
医療費が安く済む県の健保協会支部は保険料を低率に抑えられるため、県の政管健保の保険料率見合いで健保組合→政管健保へのシフトも出てくることは容易に想像できる。
例えば、北海道は高率保険料で長野県は低率保険料となるだろう。

 財政基盤を健保協会支部ごとで自主・独立するのであるから、当然、保険給付の適正化を目指して保険者の機能を充実強化していく発想を持つ組織となる。
そこで働く職員は社保庁時代とは違い国家公務員ではない。公法人の民間職員が業務を行うのだ。
保険料による収入と保険給付による支出を厳しく議論してくるだろう。
つまり、我々の業界にとっても決して他人事ではないのだ。
今まで費用対効果を考えず、大した調査確認もせずに療養責を支払ってくれていた社会保険事指所が、成績主義が導入された健保協会支部に生まれ変わるということだ。
行政としての位置付けが極端に弱まり、政管健保の保険者としての仕事ぶりが発揮されることとなるだろう。
今、一部の健保組合が行っている不当失当な嫌がらせ・療養費不払い運動などの悪質な保険者動向を、この健保協会が真似る危険性が極めて高い。
また、指導監督の権限について考えると、現行では社会保険庁本庁→各県社会保険事務局→全国的350カ所の社会保険事務所といういわば上命下達で依頼できた案件も、“うちにはうちの考えがありますから”などと上部セクションに従わず、第一線の協会現場において偏見と不勉強のもとに施術者や施術者団体、そして患者との無用なトラブルを引き起こす危険性が否めない。
現在まで、再三にわたって嫌がらせのように行われてきた一部の健保組合の不当な患者照会をそのまま実行するとは限らないが、注意は必要だ。

 また、地方社会保険事務局に設置されている柔道整復審査委員会に与える影響についても早急に分析しておかねばならない。
それには柔整審査会の施術担当者を代表する委員を大量に送り出している社団をはじめ、社団以外の施術者団体の能力も結集して知恵出しするのが良いと思う。

 社会保険事務所が民間になろうが、我々の正当な治療行為に対しキチンと療養費支払事務を実施させることだ。
そのためには我々も十分勉強をしておかねばならないだろう。
併せて、不当な新組織の動きには断固として闘えるように、今から埋論武装をしておくことが重要である。

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■上田孝之氏略歴 1958年8月 北海道函館市生まれ 1984年3月 日本柔道整復専門学校卒業、同年柔道整復師登録、社会保険庁運営部企画課計画班主査、社会保険庁運営部企画・年金管理課運営企画室主査、厚生省保険局医療課療養指導専門官、厚生労働省保険局医療課療養指導専門官、厚生労働省東海北陸厚生局健康福祉部社会保険課長補佐、同局上席社会保険監査指導官等を経て、2006年厚生労働省を退官。


上記文章は、日本鍼灸マッサージ新聞発行「鍼灸マッサージ新聞 平成18年11月25日号 柔整版」に掲載されておりますが、上田孝之氏ご本人よりSQSにも寄稿されたものです。


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