業団代表の国会議員を輩出することについて †
元厚生労働省療養指導専門官 上田孝之
私が講習会などに呼ばれたときには、国会議員や議員連盟(いわゆる議連)との付き合い方、また陳情・交渉などについて皆さんに話をしてきたところであり、「業団代表の国会議員をつくれ」と過去何度となく、関係団体の役員や業界の先生方にも呼び掛けてきた。
私たちが取り扱う保険問題は法律で保護されているのではなく、行政通知で運用されているのが実態である。単に通知で認められているということは、逆に通知一本で廃棄されることも理論上はあり得るわけで、非常に不安定な状況下に常に置かれている。
本来は法律で明らかにされた範囲で仕事ができればいい。柔道整復にかかる療養費を健康保険法第87条の療養費の条文から独立させて“柔道整復療養費”を法制化することは、現在においてその兆しさえない。
不安定な行政指導に過ぎない通知をどのように守っていくかに終始しているのが現況である。これも大切なことではある。
通知を業界が取り扱いやすく、さらなる運用上の便益と既得権の保護を求めて、議連と付き合いをしているのだ。
医療分野においては、医師・歯科医師・薬剤師・看護師とも、それぞれ自分たちの権益のための代表者を国会に送り込んでいる。
業界にとって有利となることを国政に反映させるということだ。
柔整に限らず、鍼灸マッサージにおいても議連があるが、お願いする先生方は厚生労働省関係に強い先生となることから、どうしても医師会とパイプの太い先生方となる。
柔整業界の発展を企画するとき、それは往々にして医師との軋轢を生む事案であることが多いため思ったようには進まない。
今までずっとそうであった。
また、なぜか国会議員に遠慮してしまい、お願いすべきことの半分も言えない場合もある。「国会議員は役所に強い→役所は業界に強い→業界は国会議員に強い」、逆に、「国会議員は業界に弱い→業界は役所に弱い→役所は国会議員に弱い」というトライアングルが私たちの世界には当てほまらず、国会議員に強いなどとは言えないような気がする。
医師会に気兼ねなく、私たちにとって必要な当然の言い分を正当に取り上げてくれる先生が欲しい。そのためにはただ指をくわえていても始まらない。
これから将来、毎年5,000人の免許者が誕生する。組織体制の組み方次第では、業団業界代表の国会議員の輩出も決して夢物語ではない。
また、そのくらいの意気込みと全体的な統一が図られないのであれば、業界全体のジリ貧状況の加速化を止められないだろう。
若かりし頃、労働運動で盛んに言っていた言葉がある。
「今こそ団結だ。この状況をみんなの力で変えていこう。強くなろう」
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