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現行の柔道整復諸問題にかかる所感について

元厚生労働省療養指導専門官 上田孝之

はじめに

 前月号では、鍼灸と柔道整復の環境を比較し、 ヽ慇犬琉媼韻箸靴討了餝癖数取得■廝硲呂砲ける取扱い 政治力及び議連関係 こ慳笋箸靴討琉銘嵒佞院以上4つの観点からその現況環境を比較してみたところ、柔道整復は鍼灸に比しのみ大きく優っているものの、柔整療養費取扱いは鍼灸の比ではない実態について確認したところである。
 鍼灸の保険取扱いについても、患者のために、今後大きく伸びていく必要性が当然あるが、その方策や検証については、また別の機会に述べることとし、今回号については、現行の柔道整復療養費の考えをただ単に鍼灸療養費にあてはめるだけで進捗でき得るとは思われないことから、現行柔道整復にかかる諸問題を先ず整理してみて、私の所感―あくまで“所感”ではあるが―を述べてみたい。

柔道整復師の施術実態=柔道整復の業務範囲=療養費の給付対象となるべく、3つが一致する三位一体の取組み(これには「学」が必要だ。)

柔道整復師法第15条は、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行ってはならないと定められている。この業としての柔道整復は何かについて柔道整復師法で定義をしていないのは、学問の進展や技術の発達、社会状勢の変化等に柔軟に対処しうるよう定義しなかったと、厚生省健康政策局監修の医療関係法質疑応答集に記載がある。現在運用されている療養費支給にあたっての取扱いは「急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれず、単なる肩こりや筋肉疲労に対する施術は、保険の対象外」と明記されている。これはもちろん法令ではなく、厚生省(当時)保険局医療課の通知で示されたものである。
保険適用が急性又は亜急性の外傷性のものに限られることと通知上明記されるようになったのは、主に平成5年の会計検査院報告やその後の医療保険審議会柔道整復等療養費部会の意見を受けた療養費の給付の適正化対策として打ち出されたことであり、私の認識では近年のことである。例として、古くは昭和49年6月に厚生省(当時)保険局保険課長及び社会保険庁健康保険課長(当時)から発出された内翰(ないかん)をみれば、「負傷の原因は業務災害通勤災害、第三者以外の災害によるものと記入すれば事足りる。」とされ、負傷原因が労災保険と求償権が発生する事象でない限りは何らの問題もない、負傷原因についてこと細かくする必要性がそもそもないものという仕切りとなっていたのだ。
「亜急性」という新たな表現は、平成7年9月の医療保険審議会の部会報告意見書で初めていわれたようなものであって、当時この意見書を各県の民政主管部局の保険課長(現在の地方社会保険事務局長)あてに発出した連絡通知の鏡に「ここでいう亜急性とは、急性に準じたということであり、受傷後一定の時間が経過したものを指すが、その基準は追って示すこととするので申し添える。」となっているものの、その後何らの亜急性概念の定義にかかる基準は示されることはなかった。
一般的に、亜急性を敢えて定義するとすれば、外科・整形外科と当事者である柔道整復術とでは考えが全く相違する。外科・整形外科でいう亜急性とは、受傷後一定期間の時間の経過(例えば2週間とか3週間とか)をいうのに対し、柔道整復術では、負傷の発生機序で考える。一例を挙げると、関節が捻挫を起こすほどではない、微々たる外力が反復継続して加えられることによる組織の炎症を亜急性の外傷と捉えることから保険の適用であるとする。 
療養費における給付適用範囲の拡大を政治的手法により行政から勝ち取る発想があってもよいが、そのためには現行よりも更なる強力な政治的手法を用いなければ実現は困難であろう。
現在の柔道整復師施術にかかる医師の同意は、骨折・脱臼の応急処置の場合はそもそも同意は不要であり、骨折・脱臼以外の施術には医師の同意はいらない取扱いが周知されている。また、療養費は本来、患者への償還払いであるにもかかわらず、受領委任払いというシステムが構築されて広く認知されている理由がある。それは既に平成7年9月の医療保険審議会柔道整復等療養費部会の意見書を読み直すまでもなく、

  1. 柔道整復は医師の代替機能を有すること。
  2. 柔道整復は外傷性を扱うことから、発生機序が明らかである。よって、内科的疾患を議論する必要がないから、療養費が後で不支給となる確立が少ない。
  3. 折れた、又は外れたといっているなら緊急性があるだろうから、償還払いなどという流暢なことをいってはいられない。

という、いわば大義名分があるから医師の同意もなく受領委任払いを継続する理由付けとなっている。柔道整復師が急性又は亜急性の外傷性疾患に限定されず、広く軟部組織の治療やまた慢性の経過をたどる疾患について施術をする場合に、上記 銑にある大義名分には該当しないことをもって、その部分については受領委任払いの取扱いは認められないとか、また、医師の同意を要することとなるとか、必ずそのような議論になる。
この点を恐れて、過去から既得権益として認知されてきた「急性又は亜急性の外傷性疾患」を守ろうということであったのだ。保険対象疾患かどうかについて発生機序を明確にする調査確認手法を強化することにより、保険対象から排除・排斥していく保険者の動向が、近年一部の健康保険組合で行われていることもあり、開業している施術管理者たる柔整師から、「施術したすべての手技について、外傷性に限定されず保険を認めて欲しい」旨の要望がなされることが最近特に多くなってきた。
そうすると、現状では、なぜ医師の同意が不要なのか、なぜ受領委任払いで良いのかの公然とした理由付けができないものと思われる。この点をクリアーしなければならない。ここでまさに「柔道整復学」という学問的に説明できるツールが我々柔道整復師にとってどうしても必要となってくるのである。
従来どおり、柔道整復師の施術が急性の負傷に限定されたままであるならば、ジリ貧状態の加速に歯止めがかからない。だからといって、「慢性疾患も全て施術します。」といったとたん、受領委任払いの取扱いの継続理由と医師の同意が不要の理由を手放さねばならなくなるのではないか。
「医師の同意」「療養費の償還払い」この2つの手枷足枷は、実質的に柔道整復業界の崩壊的打撃になることは明らかであることから、傷病名の適正化を議論するのは本当に難しいこととなる。慢性疾患をも治療しているのであるから、本来の整形外科的な病名で請求を認めてくれといったとき、そのとたん、じゃあ、なぜ医師の同意が不要なのか、なぜ受領委任払いで良いのかを厳しく問われることとなるが、このことについて明確に論戦できなければならない。繰り返すが、そのための「学の構築」であると私は理解している。

社団や任意団体に属さない個人柔整師の大幅な増加について

 昭和11年に受領委任払いがスタートした当初は、この取扱いが現在でいう社団会員のみに限定されていたが、昭和40年代後半頃より社団以外にも柔道整復団体が設立され、昭和50年代後半には全国規模の任意団体が複数設立されることとなった。さらに昭和63年に受領委任払いが社団の協定以外にも、受領委任の取扱規程という「契約」としても広く認められることとなってからは、接骨師会、整骨師会の設立ラッシュとなった。その後も団体の設立には歯止めがかからず、現在100団体をはるかに超えるだけの会がある。(極端な会は会長一人のみで他には誰もいないというものまで出てきたが)ここ最近の動向として、柔道整復師国家試験に合格した者は、社団法人や既存の柔道整復団体に何ら属さず、自分一人で個人として受領委任払い取扱いの承認を受け、卒業即開業する若者が顕著である。
社団の会員であれば、社団の受領委任払いの協定に基づき、適宜、社団の行う広報及び講習会により勉強し、情報交換することができ、また、社団法人以外でも、柔道整復師会員をある程度の規模で抱えている任意団体におかれても、専門の業界誌やお知らせ通知や講習会により当該会員に対する指導を行っているところであるが、私が心配しているのは、何らの会にも入らない個人の柔道整復師のことである。個人柔道整復師は受領委任の取扱いにかかる勉強の機会に恵まれない。これらの柔道整復師におかれては、受領委任の契約、正確には受領委任の取扱規程第9章の39まで全部読み込んで理解して保険請求をすることがなかなか難しい。
契約当事者である地方社会保険事務局長・県知事が行う集団指導にきちんと参加すれば何とか知識を増やすことができ得るが、これにも参加しないということであれば正しい請求方法を知らず、不正請求に走る者が多々見受けられるということになってしまい、とても悲しいことだ。ここで私は、個人柔道整復師が悪いといっているのではない。全くの個人でも積極的に情報を入手しながら勉強をし、危ない業者にも引っ掛からずに健全経営に邁進されているのであれば結構なことである。
しかしながら、柔道整復師同士で、情報交換や技術の切磋琢磨しあえるのも、また、正しい保険請求を行うためにも、何らかの団体に入会したほうが有利であろうし、きちんとした情報提供を受けて健康保険を取り扱ってもらいたいと願っているところだ。

ファクタリング(債権譲渡)システムの療養費取扱いからの排除

 前記、社団及び任意団体に属さない個人柔整師の弊害で触れたことをもう少し追加して書いてみたい。柔道整復療養費にかかる「ファクタリング」又は「早期支払」のシステムと称する取引について、今となっては、既に業界の皆さんが知ることとなった。これは簡単に言うと、柔道整復師が施術を行って、被保険者との間での受領委任払いによる施術管理者たる柔道整復師の受けるべき療養費を「債権」と位置付けたうえ、それを第三者に譲渡する考えのもと行われている取引である。つまり、先ず、柔整師は施術を行ったことをファクタリングを専ら行う業者団体(以下、「業者」という。)へ連絡する。この場合の連絡は、単に施術内容のメモの場合もあるし、きちんと完成した療養費支給申請書の場合もある。メモ書きの場合は業者において療養費支給申請書を後ほど作成する。業者が連絡を受けた段階で、すぐに柔整師には一部マージンや手数料等を差し引いた額につき、先払いをしてしまう。申請書上は、業者が施術者から復委任の取扱いということで、実際に後ほど保険者が入金するのは、業者の口座である。
このファクタリングシステムについて、ここでは紙面の都合上詳細の説明を避けるが、既存の柔道整復団体による「資金貸付制度」とは異なり、施術管理者たる柔道整復師が有する受領金返還債務と残金請求権を相殺するという受領委任払いの大原則を完全に無視した保険給付金の流れであることを、私は問題にしたい。そこでは健康保険療養費の給付金を「債権」と位置付けたのだから、柔整師は業者にその権利を売却・譲渡し、一方、業者は柔整師にその債権を買い取ったという意味での買取代金を現金で即金支払うものである。当該システムは運営に使う資金提供者である出資者と業者との間での関係が悪化すれば、たちどころに危機的状況に陥ることが明白であり、また、若い免許取りたての柔道整復師がこのシステムに参加するにあたっても、いわゆる白紙委任状的な書面の提出を求められていることもあって、極めて危険なものである。通常の柔道整復師であれば、このような業者の手中に落ちるわけはないが、自己資金が全くないのにもかかわらず、兎に角開業して荒稼ぎをしたい、などという者にとっては、逆に魅力的に見え加入してしまう。
世の中そんなにおいしい話があるわけはない。社団や既存の大規模な柔道整復師の団体にきちんと加入し、その組織の勉強会や保険取扱いの学習会に参加の上、正しい保険請求に心がけることが、結局は自分の身を守ることになる。
また、このような既存の会に参加しなくとも、一人でコツコツ勉強し正しい保険請求に努めている者であって、ある程度の自己資金を有してから整骨院開業を始めたのであればファクタリング業者を利用することもないだろうから安心しているが・・・。
自分が加入している組織がファクタリング組織かどうかを良く見極めて、適切な身の振り方を考えるべきであろう。
 また、ファクタリングシステムが療養費の受領委任払いの取扱い上馴染まないことを行政に理解していただき、行政からのファクタリングを認めないことについての通知を発出してもらうことや、受領委任払いの取扱い当事者である地方社会保険事務局長及び都道府県知事がファクタリングを認知しない取扱いを行うよう、保険者等に徹底していただくようにならなければ、業団や業界のみで取り組んでいてもなかなか思うように進まないだろう。

医接連携(整接連携)の連携基盤の構築

 整形外科医も柔道整復師もともに相互連携にかかる健康保険法上の適用について議論する必要がある。柔道整復師としてはあまりに既得権益のみに固執していないか、医療事故についての責任をどう考えているのか、単に全身マッサージしかできないと名指しされていることをどうするのか。
また、整形外科医は、柔道整復療養費受領委任払いの廃止を単に柔道整復師の不正・不当請求の観点のみで議論していないだろうか。受領委任払いは被保険者・患者の保護の見地から有益であり、過去において何度も何度もその存続につき国会において質疑されてきたところであるが、今さら廃止というわけにはいかないし、一部の不正請求をもって廃止などということにはならないことは、再三にわたって討議してきたところである。
 病院・診療所と接骨・整骨院との連携を議論する前に、基本的な保険環境を整備しなくては始まらない。現行の療養費の取扱いでは、平成11年10月に厚生省(当時)保険局保険課長補佐発出の事務連絡に見られる2点、

  1. 同一月に医師から骨折の後、治療を依頼される場合
  2. 医師が柔道整復師に骨折等の施術を同意する際、経過観察又は一定期間後に再検査の指示を行う場合

を除いては、一般的に各保険者は療養費支給決定事務にあたり、医科との併給とみなし、医科の診療報酬のみを認め、柔整療養費は不支給(又は一部不支給)処分を行ってしまいがちである。もっというと、上記の保険局保険課長補佐事務連絡さえ知らず、何でもかんでも「医科との併給併用」を理由として不支給にしてしまう健保組合がたまに見受けられる。
よく勉強している保険者が「当該骨折にかかる医師の同意を確認したので、両機関での受診・受療は何ら問題なく支給します。」と支給決定される事例も稀にあるが、一般的には医科の診療報酬明細書(レセプト)の提出が確認されたなら柔整の療養費支給申請書を不支給にする保険者がいまだに多数見受けられるのが実態である。
少なくとも医師が柔道整復師の骨折・脱臼施術に同意しているのであれば、医科との併給問題は発生しないものと仕切らなければ、双方患者を「連携」の名のもとに送り合うことなど到底できうるものではない。
医師と柔道整復師の相互連携をまじめに考えるならば、まずはこのような基本的な問題から整理したうえで、相互連携の環境整備を進めていかなくてはならない。

療養費の受領委任払い取扱いのための試験制度の導入

 健康保険の給付については、給付の適正化の見地から、今後とも締め付けが厳しくなるものと思われる。医科の本体において包括化が進み、4月から実施されている診療報酬の改定においても、また、今国会で可決成立した医療制度改革関連法案でも、この考え方が如実に顕れている。 
回数を多くやっても一定基準を超える部分は健康保険では支給されないとか、出来高でカウントできていた分を一括りにして算定することによる給付の目減り策である。医科の診療報酬が厳しさを増すなか、柔道整復術療養費という現金給付だけが相変わらず守られ続けるという訳にはいかないだろう。そんななかで、引き続いて療養費の受領委任払いを今後とも継続していくにあたっての防衛策はいくつも考えられるだろうが、実行となるとどれもこれも困難な様相である。
先ずは、療養費の受領委任払いの取扱いのための試験制度を新たに導入してみてはどうか。現在はあまりにも保険にかかる約束事を理解していない者が目立っている。正しい知識のない者が誤った請求のもとに荒稼ぎできるという制度であるならばよろしくない。
例えば、4部位の負傷の発生に対して施術を施したのであるから4部位分請求できるのであって、4部位まで保険請求ができるから4部位請求するのではないのだ。
また、近接部位の算定についてもルールを理解できない者が多く、そもそも受領委任払いについての知識が全く欠落している者でも、皆すべて保険の取扱いが許されている。
そもそも、受領委任払いというものは、柔道整復師のためというよりもむしろ被保険者保護・患者保護の観点から認められていることを忘れてはならない。
現行の社団会員の登録制と社団会員以外の承認制は、共に結果としては同一であり、つまるところ、手をあげたその全ての柔道整復師に対して受領委任払いを認めるものであるが、請求に一定の網を被せることで、申請における適正化を図ることになるのではないだろうか。一考の価値はあるものと思われるが、独占禁止法に抵触する可能性が大きいので、単に通知レベルでは、実施は難しいことが予想される。

開業・保険取扱いの条件としての免許取得後一定年限の実務研修

 昨年度より既に、財団法人柔道整復研修試験財団の主催で「卒後臨床研修制度」がスタートしている。この卒後臨床研修には私も「行政指導」の講義を担当させていただいたところである。
しかしながら、参加者に対しての強制力がないことから、ごく一部の参加に止まっている。
卒後の臨床研修を充実させるのは当然必要なことであるが、開業や保険取扱いの条件に卒後研修や実務研修を位置付けられたなら良い。
卒後の実務研修の強制化については、平成12年頃に社団法人日本柔道整復師会でも企画されたと記憶しているが、何といっても行政の理解と取組みがなければ、業団のみでは実現は難しい。
柔道整復師法という身分法で資格を有している者に、強制力をもって実務研修や卒後研修を履修させるため、開業や保険取扱いを条件にできないものか。身分法の考えでは公平性の点で問題があると聞いているが本当だろうか。

療養費取扱いに関しての供託金制度(保証協会・供託基金)の設立

療養費の受領委任の取扱いについては、適正的確に行われることが重要であるが、近年、支給申請にあたり不当・不正な請求が後を絶たない。不正行為が発覚した場合は、受領委任の取扱規程により、原則5年間の受領委任の取扱いの中止を受けるとともに、不正請求にかかる返還を求められることとなる。このとき、行政及び保険者において支給済みの療養費の返還を命じても、返納義務のある施術管理者である柔道整復師がこれに応じない事例又は、返納したくとも金銭的余裕がなく、不正利得にかかる返還金納入のできない事例が増加する傾向にある。
また、開設者(オーナー)に雇い入れられている施術管理者たる柔道整復師は、返済能力に乏しいのが一般的であり、この場合、柔道整復師免許を有しない開設者に対しての返還請求は行われず、あくまで施術管理者たる柔道整復師あてにのみ請求されることから、開設者(オーナー)に比し圧倒的に収入が少ない施術管理者にあたっては、この返還金納入ができない事例が顕著であるものと思料される。
そうすると、各保険者においては欠損扱いとなるが、各保険者において療養費の返納金が返還されないことは重大な問題であり、また、国民感情に対しては返納がきちんとなされないことからくる公平性の観点において不平等感を与え、柔整に関しての不信感を助長し、しいては柔道整復施術全体にマイナスイメージをもたらすことになる。不正請求にかかる返還額を返納しないなど許されるものではない。
しかしながら、現状においては、受領委任取扱いの当事者である地方社会保険事務局長・各県知事とも、受領委任取扱いの中止措置を行うのは当然として、不正支給済み額の返還にかかる事務については、その回収が極めて困難な状況にあることは容易に想像できる。
このような不正請求にかかる返還命令額について、あらかじめ寄託してある供託金をもって充てることにより、加盟している柔道整復師全体における連帯責任をもって、共同で担保しうる機構組織を設立する意味は大きいものと思われる。このための供託金運用の専門基金を設立することは社会的に意味のあることであり、併せて柔道整復師の業団・業界にかかる再編・統合に資するものである。
保証内容としては、保証対象不当・不正請求が判明し、行政の指導に基づき保険者が返還請求した療養費相当額について、基金から直接請求保険者あて返納することとし、当該供託金は施術管理者である柔道整復師のみならず、開設者及び勤務柔道整復師も寄託する。
そして重要なことであるが、この制度において代位弁済権は当該基金が取得し、当該処分者に対し全額回収を求めることとし、必要に応じて告訴・告発等の法的手段に訴えることも認めるような制度を構築してみてはどうだろうか。

免許取得者に対し技術を選別し、差別化を図る

柔道整復師の施術技能によって、差別化を図ることも重要である。施術者の側からの差別化の企画は数多くの抵抗が考えられる。同じ身分法で規定されている柔道整復師であるから、柔道整復師法自体に差別化にかかる規程を盛り込むことなどできない。そうすると通知による行政指導レベルか又は業団業界における努力目標的なレベルにしかならず、全柔道整復師を対象とした差別化は強制できないだけにその実行性に問題が多い。“認定”柔道整復師制度を構築しようとすれば、まず“認定”柔道整復師とはどのようなものかを国民・患者にひろく認知して戴かねばならない。単に業界に閉じた“棲み分け”では、例えば医接連携が円滑に進捗していくための方策には便益であるが、“認定”柔道整復師がどのように優れているのかの客観的確認をどの機関がどのような基準で行うのか、また、広報活動をも含めた議論を十分にしなければならないだろう。
また、この場合既存の学会がその学術にお墨付きを与えるということで考えると、実質「ザル法」との非難を免れないかも知れないが、やり方次第では有効である。
他に、旅館やホテルにあるように、施術技能を第三者機関が調査・確認のうえ、例えば柔整の【適】マークを交付するような方策もあるだろう。
このように、ちょっと考えただけでも差別化の案がいくつか出せるが、実際に企画していくとなると、たくさんの反対に遭うことだろう。
しかし、医療過誤・健康保険の財源の見地からみても差別化はとても重要なことであり、反対の声が大きくても、業界のために、ここは勇気をもって是非とも取り組んでいく必要がある。もちろん私も知恵を出していきたい。

柔道整復業団・業界の統一化の必要性

 柔道整復師のレベルに応じた差別化を図るにも、また、健康保険療養費の適正化に資する対策の企画実行にあたっても、実施にあたっては極めて難しいものと考える。たしかに規制は廃止や緩和に向け修正されるが、財政環境の低迷のため、新たな財源を要する制度や新たに補助金を要するというのは、行政の了解を得ることが非常に難しいことであろう。現行の身分法である「柔道整復師法」は、試験に合格してその資格を有することになれば一様に平等であり、等しく開業することができる。受領委任払いの取扱いにあたっても同様なことがいえる。
いくつか述べてきた企画モノは、全て法令上の強制権限が付与されていないことからひとしく命ずることができず、また、健康保険法及び柔道整復師法を改正したりしても、独占禁止法の業務占有の観点から認められない可能性もある。この点は医学的臨床効果を議論している訳ではないので、政治的な力関係(ポリティカルパワー)の範疇であろう。
現行の業界は3万人の資格者の所属する団体数が厖大な数におよんでいるため、意識の統一や要望の一元化、さらには広報・情報周知の徹底にあたっても非効率である。業界内の意識を統一し、力の集中強化を図るためには、是非とも業界内の一本化が望まれる。このことについては、今般縁があって、業界の人間になったことから、私もただ単にカッコつけた評論家ではなく、きちんとした業界の統一の可能性とそのための活動内容、併せて実際に取り組むにあたっての個別解決策を複数ご用意できなければならない。
私が思うに、諸問題の解決のためには何といっても業界の統一化が正に“最重要案件”である。行政や保険者との窓口の一本化による交渉の強化や効率化に止まらず、業界統一から実現し得る諸権利の拡大獲得のための国会闘争(つまり業界から国会議員を送り出すということ)のためには、業界の統一は必要不可欠である。
療養費にかかる諸交渉の強力化が図れることのみならず、柔道整復術にかかる療養費の受領委任払いの取扱いやこれにかかる料金改定は、従前から、協定の当事者として社団のみが交渉対象者として臨んでいるが、行政側の本音は「組織率が過半数にも満たない状況で、業団を代表していると言えるのか?」という非常に厳しい認識を持っていることから、業団全体の意向である旨を強力に発言・発信するにあたっても、是非とも業界業団の統一が必要である。
また、単に療養費の取扱いや健康保険上の諸問題に限定することなく、広く柔道整復業界の今後の展開をまじめに考えた場合の諸問題、例えば既に述べたところではあるが、柔道整復師に群がり、柔道整復師を利用して不正・不当に利益を得る者(柔整施術の周辺者問題)への取組や、無資格者に対する対応策の構築等にあたっても、そして何よりも、政治闘争、国会活動を意識するのであれば、業界統一のプライオリティーはまさに学の構築や傷病名の適正化、養成校乱立問題よりも高いものであり、すべてに優先されるべきものといっても過言ではない。
いい方を変えると、業界統一が現行発生している諸問題の解決にあたっての前提条件であるともいえる。
個人柔道整復師に対して、何らの具体策を講じることができないならば、これらの者は一切の政治的行動もまた活動のための金銭の拠出をも行わないのである。にもかかわらず、恩恵は等しく同一に受けるのであるから、大所高所からみても業界は弱体化しており、今後も弱体化に歯止めがかからず、むしろこのままでは弱体化のスピードが加速することとなる。
これから柔道整復資格者や鍼灸資格者は厖大な数に上ってくる。その大量の免許保有者の輩出にあたって、ただ単に「困った、困った。」などと心配していても始まらない。この個人柔道整復師にも、自分たちが一人一人業界を支え、この業界のまさに一員であるとの自覚と問題意識を保有していただき、是非とも、私どもと共にこの難局面の打開のために参画してはいただけないか。業団業界の生き残りを懸けてこの偉業に参加して欲しい。
前回号で既に述べた、「政治力及び議連関係」とも関連するが、柔道整復顧問議員団世話人会の国会議員メンバーにおいては、従来より強力な厚生族議員で占められてきたところであるが、橋本(龍)先生、野中先生をはじめとした柔道整復業界に対し懇意に動いてくれた議員が死亡あるいは引退されたうえ、顧問議員団本体を構成する国会議員が既に2世、3世議員の時代に突入した現在、国会におけるパワーをみても心細いものである。
社団脱退者にかかる社団組織体に対する過去の恨みつらみや、現行よりも収入が減少する可能性に対する危惧を考えると、おいそれ簡単に統一できるなどあり得ないし、また、過去においても統一に向けた努力について、一部組織においては考えられたことくらいは容易に推察できる。
また、組織統一化が実現できたとしても、行政と対峙していくなどという発想が持てずに、一日も早い叙位叙勲を希望する動きが強固であるならば、私の出番など無いかも知れない。
金がおおいに絡んでいるだけに業団の一本化は難問である。業団業界の統一に、はなから反対を掲げる団体も複数存在する。当面はまず既存の任意団体毎のまま、別途、新たな箱物を構築し、その対象案件に限定すると業団が統一化されているというところから始める。(例:業界から国会議員を送り出すハコ。受領委任の取扱いのみに特化したハコ、等)
しかしながら、本音では各会長とも大将でありたいし、社団法人に対する拒否反応も私が想像するよりも相当に強固である。そしてなによりも、業団統一にあたっては行政側の理解や後押しがなければなかなか進まないことであろう。
社団は何といっても業界の唯一の公益法人であり、組織統一化に向けた大きな実行部隊であると推察するし、又実際知恵出しもしている。私は、他の団体にも声をかけながら協力体制の構築に向け努力することとしている。業団統一に向けてはかなり激しく汗をかかなければならないだろう。
行政にもご理解を頂けるように打合せや、交渉をしなければならないが、役所の顔色を窺うのではなく、それぞれの問題点を懇切丁寧にご説明し、行政からの信頼を獲得しなければならない。単に行政を非難しているだけでは進まないことについては、私は十二分に理解しているところである。また、一部幹部の先生方におかれては、国からの勲章などいらないという意気込みがなければ交渉の席上では遠慮に終始することとなる。
社団法人日本柔道整復師会の幹部から業界の統一化について「今考えている。」旨の発言があったが、現在までの考えや方向性について明らかにしたほうが良いのではないかと思われる。私も業団統一化のための努力を惜しまない。
なお、業団の包括的統一にあたって、その実現に向けた「活動計画」までも提案することは吝かではないが、実際に目標に向かって活動を展開していこうとすれば、統一に参画していただく団体の歴史的背景や現行組織体制(例えば元社団会員であったか否か、現行で既に連合会を組織しているかどうか、団体として総会等の意思決定機関・議決機関を有しているかどうか、等)について個別的に取り組まねばならず、また、それぞれの抱える内部事情の公表についてあらかじめ了解を取りつけてからでなければ、紙面で明らかにすることなどできないので、ここではそのあたりも記載したいところではあるが、今暫く御容赦願いたい。
ただ、私としては単に重要問題を「困難」と括って傍観する気はなく、従来の「評論」を超えた当事者として真面目に尽力したいだけである。業界の統一の可能性と具体的活動内容、実際の個別的難関事象の分析にあたっては、先ずは社団日整の先生方、任意団体の会長幹部の先生方をはじめとして、小規模団体の代表者ともお話しをさせていただきたい。

おわりに

以上を実現するためには、行政及び保険者、ときには業界自らに対しても強いリーダーシップをもって各種働きかけを実行するための政治的取組みが必要になるものと思われる。  
ここでいう政治的な取組みとは、具体的には業団・業界の柔道整復における統一化であり、それでもパワー不足であるならば、「療養費取扱い全体の問題」で結集し、柔道整復に鍼、灸、マッサージをも統合した療養費関係全体での統一化を図ることでもあるし、レベルはどうであれ、先ずは施術者・免許者の統一化のもと、一人でも多くの「自前」の国会議員を国政に送り込むことによる、諸問題の解決の実現という発想があってもよろしい。


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